「藤堂組組長、藤堂陸です。以後、お見知り置きを」


「藤堂組…!?」



驚いた黒川の顔はすぐにニヤッとした笑顔に変わった。



「藤堂にも子供はいたんだなあ」

「それ以上話せばお前、どうなるか分かってるよな?」



お兄ちゃんの低い声も無視して、言葉を続ける。



「そうか、お前あいつの子供だったのか」



黒川の目が私を捉え、また体が動かなくなるような感覚を覚えた。

その様子を感じたらしいお兄ちゃんが黒川との間にスッと割って入ってくれた。



「瑠榎さん、こちらへ」



やっと体が動くようになったと思えば、早川さんが私の後ろから声をかけてくれた。


誘導されるがままに少し立ち上がった時。




「お前らの両親、雪で事故なんて不憫だったなあ」



黒川の声が私の動きを止めた。



「おい、それ以上話すな」

「瑠榎さん、早く」



お兄ちゃんや早川さんの声が聞こえて、これ以上聞いてはいけないと思うのに体が固まってしまった。

心の底で、真相を知りたいと思ってしまったからなのかな。



「ブレーキ、運転する前に確認すればよかったのになあ」

「黒川!!」



お兄ちゃんが銃を素早く取り出し、黒川に向けたのがわかった。



「お兄ちゃん、撃つ必要なんてない。殺人はダメだよ」