気を抜けば、弱い私はまたキョウの手を取ってしまいそうで。

でも、これ以上は繰り返すべきじゃない。



「一緒にいたって、私はキョウを苦しめることしかできなかった。だからキョウには、全然関係ない別の誰かと幸せになってほしいの」

「何だよ、それ!」

「奏ちゃんだってそうだよ。私なんかに囚われるのは間違ってる。こんなに世界は広くて、たくさんの人で溢れてるのに」

「勝手なこと言ってんじゃねぇよ!」

「勝手だってことくらい、わかってるよ。だけどね、私とキョウでも、私と奏ちゃんでも、幸せにはなれないよ」


キョウはぐっと唇を噛み締めた。



「そんな答えを出させるために、俺は律と奏と会わせたわけじゃない」


キョウの瞳が私を見据える。

真っ直ぐに、逃がさないように。


だけど私は顔を伏せた。



「もし私と奏ちゃんが会ってなくても、私とキョウは遅かれ早かれこうなってたよ」

「決めつけんなよ! 勝手に決めつけてんじゃねぇよ!」


キョウは私の腕を引く。

強く、強く、その手に力を込めて。



「じゃあ、俺の気持ちはどうなるんだよ! 俺の……奏の……気持ちは……」


冷たいキョウの手が、悲しみに震えている。



「だったら私は? 私の気持ちはどうなるの? 私が自分の気持ちを誤魔化してれば解決するの?」

「……何で、そんな……」

「私だけじゃない。誰かが嘘をついたら、また苦しむことになる」


自分を守るためじゃない。

キョウと、奏ちゃんの、心を壊したくはなかったから。


だから、私が言ってあげるの。



「私がキョウと別れたいの」