「寒いだろ? とりあえず、乗って」


キョウは言った。

けれど私は、首を横に降る。



「乗れよ。飯でも行こう」


それでもキョウは食い下がろうとするが、



「乗らない。ご飯もいかない」

「じゃあ、どこ行く? 帰るか?」

「私、もうキョウの部屋には戻らない」


キョウは一瞬、目を開いて、でもすぐに言葉を探そうとする。

私はそれさえ遮って、唾を飲み込みながら、



「別れようよ、キョウ」


喉元から、やっとその言葉が出てくれた。

言ったら少し、力が抜けた。



「何言ってんの」

「私たち、別れた方がいいと思うの」


瞬間、キョウはぴくりと眉を動かして、怪訝な顔になる。



「奏に、何か言われた? まさか、ほだされたからあいつのとこに行くって?」

「奏ちゃんは関係ない」

「じゃあ、何で!」

「私たち3人が本当の意味で前に進むためには、もう一緒にいるべきじゃない。キョウとも、奏ちゃんとも、一緒にいない方がいい」

「ふざけんなよ!」


キョウは吐き捨てるように声を荒げた。

ガッ、と車のボンネットを叩きつけ、キョウは、



「そんなことわかってるよ! それでも俺は律がいなくなるなんて考えられねぇんだよ! 頼むから別れるなんて言うなよ!」