「可愛い…」
あたしが今見てるのは、小さなリボンがついた華奢な指輪。
『紗江―?……』
「あ、優!なに?」
『ちょっとトイレしてくっから、あそこで待ってて?』
優が差したのは、時計塔の下のベンチ。
「うん。分った!」
優にそう言われ、あたしはベンチへ。
あれから五分。
優はまだ帰って来ない。
「遅いなぁ…」
まさか逆ナンされたとか!?
優ってかっこいいし…。
「君、一人?」
「ぇ…?」
「良かったら俺らと遊ぼうよ」
「いや…。人待ってるんで」
「女の子?その子も一緒にでいいよ?」
「いや。彼氏ですから…」
「え~。じゃぁ彼氏なんかほっといて、俺らと遊ぼ??」
「嫌です。どっか行ってくれませんか?」
「とにかくいいじゃ~ん」
「しつこいなぁ!あたしは彼氏一筋なんだから!あんたらなんかにみじんの興味もねぇっつーの!」
「へぇ♪ねぇ、キスしよっか?」
はぁ?
今の話こいつら聞いてなかったの?
「イヤだし!」
「まぁまぁ」
そう言って一人の男があたしを押さえつける。
「ちょッ、ゃ、やめて!」
そしてもう1人があたしに迫ってくる…。
「ゃッ!やめ…。ゃ…」
怖くて声が出ない……。
通行人は誰も助けようとしてくれない…。
助けて…

優―…!!

ドカッ!

あたしにキスしようとした男が目の前から消えた。
『紗江!』
「ゅ、優……」
もう1人は優にビビって逃げ、もう1人も逃げた。
「こ…怖かったよぉ!!」
『遅れてゴメン…。もう…大丈夫だからな…』
ギュッと優はあたしを抱きしめた。
「うん…」
優の胸の中は…居心地が良かった。
『帰るか…』
「うん」