しばらく食べていると

零が箸をおいた

「どうした?」

「ちょっと気分悪くて・・・」

苦笑いしながら言った零に少し違和感を覚えた

「ちょっと気分転換に鞄でもとりに行って来るね」

「・・・ああ、わかった。道、わかるか?」

伺うように聞いた俺に零は少し考えて言った

「たぶん・・・大丈夫。かならず戻ってくるよ」

「・・・そうか」

そう言って送り出した零の背中を見て思う

やはり違和感は気のせいじゃないだろう

さっき零はかならず戻ってくる、と言った

すぐ戻ってくる、ならわかるが“かならず”と言ったのだ

少し心配だな・・・

そう思った俺は席を立つ

「あら?慧どこか行くの?」

にこにこ笑顔の母さんになぜか悪寒が走った

「い、いやちょっと零のところに・・・」

「ごはんは、食べたの?」ニコニコ

歳に似合わず首を傾げた母さんに俺は仕方なく腰を下ろした



この時零を追っていれば・・・と後悔したのはもう少し後の話