「すまん、ちょっとボーっとしてた」
苦笑いしながら戻ると慧が怪訝な顔で見ていた
「そうですか・・・」
「あ、姉貴と龍ヶ崎もう着てるみたいだぜ」
「さ、いそがねーと」
明人がそういい
俺は慧の視線から逃げるように、明人と理人を部屋に押し込んだ
俺も入ろうとしチラリと慧を見る。
「なにがあったか知りませんが、いつでも言って下さい。」
少し大人びた表情で言った慧に俺は
自嘲的な笑みを浮かべつつ呟く
「・・・サンキュー」
そんな俺に慧がフッと笑った気がした
たく生意気になりやがって
初めて会った頃の可愛さはどこにいったやら
慧なんかに心配されるなんて、俺もまだまだだな
先ほどとは違う笑みを浮かべつつ携帯を取り出す
プルルルップルルルッ
『はい』
しばらくして出た相手にいつもの穏やかじゃない声で言う
「奴らが動き出した、俺も気をつけるからそっちも気をつけてくれ・・・親父」
そんな俺に相手・・・親父は悲しそうな威厳のある声で言う
『そうか・・・よりによってこの時期に、か』
その言葉に疑問を持ち聞こうとして口を開きかけたときだった
「咲夜・・・か?」
この場で聞こえるわけのない声を聞き慌てて振り返る
「え・・・」
俺は無意識のうちに耳から携帯を遠ざけた
携帯からわずかに漏れた声は俺には届かなかった
『・・・───が帰ってきた』