しばらくして姉さんが美少女を抱きしめている光景を見飽きた頃

座り込んでいる兄貴が目に付いた

座ったまま恨めしそうに姉さんを眺めている…いや睨んでいる、ことから美少女は兄貴にとって大切な存在なんだと察せる。

「もぅー本当に可愛すぎる!」

「…苦し」

ギュッ

とさらにきつく抱きしめた姉さんに美少女が息絶え絶えに呟く

…が姉さんには聞こえてない様子

これはしばらく離してもらえないだろうなと

思った俺は咲夜さんに目を向ける

「咲夜さん」

「ん?」

そう呼びかければ、さっきまで怒っていた人なんだろうかと疑うくらい穏やかな返事が返ってくる

やっぱり咲夜さんは優しいな…

といつもならこの穏やかな気持ちに浸るところだが

今日は早々に切り上げて疑問をぶつける

「あの…子は誰なんですか?」

美少女…

と口に出すのはなぜか、ためらわれてあの子と言った

「あ?…あぁ零のことか?」

零…?

その名前に少し首を傾げたが姉さんが美少女のことをそう呼んでいたことを思い出した

「はい」

「あー、あいつは…」

なぜかためらっている咲夜さん

聞いてはいけないことだったのだろうか?

ジッと咲夜さんを見つめると

戸惑ったように視線を泳がせる

しばらくすると諦めたように咲夜さんが口を開いた