その日はいつもの様に学校にいった。


そして、いつもの様に教室に入り、席についた。


昨日は録画していた映画を夜中まで見ていたので、椅子に座った瞬間、私を軽い睡魔が襲った。


ちょっとだけ...。


そう思って私は机にうつ伏せた。


...後々、私はそれをすごく後悔することになる。


ちょっとだけ、ほんの数分のはずが、私は日頃しっかり寝れてなかったせいか、気がついたら1限がとっくに始まっている時間だった。


「...あ、やばッ!?」


飛び起きて周りを見渡す。


だが、教室には誰もいなかった。


あれ、移動教室だったっけ?と黒板にふと目をうつすと、


『朝に来た人から体育館に集まること』


と書かれていた。


なんだ、皆、体育館か、と私は席をそっと立つ。


すると、ひらりと1枚のメモが私の机の上から落ちた。


『ちゃんと声はかけたんだからね!早くおいでよー(笑』


筆跡からして多分、綾瀬だろう。


綾瀬というのは、私の友達だ。


「じゃ、ウチも早くいかなきゃ」


そうして、私は体育館に向かった。


体育館に着き、そっとドアを開き、中を覗く。


中には生徒達が座っていた。


でも、まだ話が始まっていないらしく、ちらほらと話し声が聞こえる。


と、私に気づいた先生が手招きをした。


軽く会釈をして、私は自分のクラスの場所を探した。


「...あ、美崎ー!!こっちこっち。」


綾瀬がうろうろしていた私に手を振る。


私は綾瀬の隣に腰をおろし、聞いてみた。


「今日って全校朝礼か何か?」


「いや、知らなーい。黒板みて来ただけだよ。」


綾瀬がのん気に答えたので、私はそっか、と返して、ステージの方を向いた。


すると、ステージの上に人があがっていった。


私は視力が低い。


誰だが分からずに、試行錯誤していると、


「あ、校長じゃーん。」


綾瀬のその声であの人は校長だと一人合点した。


校長はマイクを自分の方に調節し、そして話始めた。


『今日集まってもらったのは、今日からこの学校の学習体制が変わる為です。』


綾瀬がえー、とか言っている。


他の生徒も少しざわついている。


『えーこれからはこの学園で。』


『バトルゲームをしてもらいたいと思います。』


「...は?」


私も綾瀬も他の生徒も同じ様な言葉を発した。


なおも校長は続ける。


『しかし、これはまだ決定事項ではありません。ですので、今日一日。お試し期間を設けます。』


「...校長、末期だね。」


綾瀬が暴言を吐いたが、校長に届くはずもない。


『これから、2時間ほど、武器調達の時間とします。生徒のみなさんは自分に最も適した武器を調達して下さい。調達したら、自分のクラスに戻って下さい。クラス全員か教室に入った地点でゲーム開始です。詳しくは担任の先生から話を聞いて下さい。』


校長は一気にそれだけ言うと、


『幸運を。』


と言い残し、ステージを降りた。


そして先生達も次々と体育館を出ていき、


残りは生徒達だけとなった。


「...で?」


綾瀬が小声で私に問いかける。


「校長がいう...武器調達?した方が良い訳?」


わからない。


そう答えようとした時、校内放送の音がした。


『...皆さん、早く体育館から出て下さい。そうしないと、ゲームオーバーになってしまいますよ。』


「ゲームオーバー?どういう...」


と、綾瀬の素朴な疑問は激しい爆発音にかき消された。


鼓膜が破れるんじゃないのかと思う程の爆音は体育館の上から聞こえてきた。


生徒達はみんな上を見上げようとした。


だが。


「...きゃああぁぁああぁあぁぁ!!」


「ヤバいッ早く逃げッ...。」


体育館の屋根はさっきの爆発で無くなり、私達の上には今にも落ちてきそうな...。


包丁がたくさん吊るしてあった。


そして、さっきの衝撃でそのうちの何本かが落ちたのだろう。


だって私達の隣に座っていた3年生の何人かにその包丁が刺さっていたから。


包丁が刺さっている3年生は最初上を見上げようとしていた様だった。


そして天井に吊るされた包丁に気づく前に包丁の餌食になってしまったのだろう。


「...うっ...あぁぁあぁぁ...。」


自分の体に刺さっている包丁を見つけ、体中の痛みに気づいたのか、体育館は刺された3年生達の声でいっぱいになった。


「...。」


「...。」


私と綾瀬は最初意味が分からず、その場に固まっていたが、恐怖に耐えかねた1年生が勢いよく体育館から出ていく音で我に帰り、何とか体育館を脱出した。


体育館から逃げる途中、私達の頭では1つの事しか考えていなかった。


『武器を...武器を探さなきゃ!!』


自分の身を守れる何か武器がないと、私達は確実に殺される...。


その恐怖で私達は必死になって武器を探した。


しかし、武器がありそうな場所を探しているうちに綾瀬とはぐれてしまった。


「綾瀬...1人で大丈夫かな...。」


でも人の心配を出来る程、私も安全ではないので、取り敢えず、武器を探すことに専念することにした。


体育館のすぐ側には下駄箱があって、その先に教室がある校舎がある。


私はとりあえず、下駄箱に足を踏み入れた。


やはり同じような事を考えている人がいるらしく、下駄箱にはすでに数人の人がいた。


私は他の人と同じように、下駄箱をあさってみた。


しかし、やはり下駄箱は下駄箱。


靴以外何も...。


「...あ。」


何も無いと思った下駄箱で丁度良い武器を私は見つけた。


傘、だ。


私は傘立てをあさり始めた。


すると、鉄製の白くて長い傘を見つけた。


『これにしよう...。』


私は傘を抱き抱え、下駄箱を出た。


確か校長は武器を手に入れたら教室に行けって言っていた。


私は足早に自分の教室に向かった。


教室のドアを開けて中に入ると、中にはすでに6、7人いた。


「...。」


皆、私の登場に気づいたが声をかける者は誰もいなかった。


私は近くにあった机から椅子だけを抜き取り、教室中を見渡せる位置に座った。


今、気づいたが皆それぞれ武器らしい物を手にしていた。


何かは分からないが長い木の棒から、数学の時に使う三角定規まで、とジャンルは様々だった。


だが、顔は真剣そのものだった。


私は、込み上げてきた不安を隠すように傘の柄の所を握りしめた。