「お願いしまーす」

さっそく、情報屋からもらった、岡本 聡美の出没地にティッシュ配りとして現れる。写真はもらっているので、どんどんと実行に移していくのみだ。

彼女はフラメンコ教室に通っているらしく、この辺りをよく通りかかるらしい。

(あっ、あの人だ)

寿恵はさっそく岡本のところに走り寄る。

「お願いしまーす!」

本当に引かれるのではないかと言うほどの勢いで、寿恵は岡本にティッシュを向けた。

「いえ、私は別に・・・」
「どーぞどーぞ、受け取ってくださいなっ!」

押し負けてはいけない、そう思って寿恵は無理にでも岡本がティッシュを持ってくれるようにした。

寿恵が握っているティッシュに岡本がしぶしぶ触れたその瞬間だ。寿恵の力が発動する。

(今だ!)


一瞬のうちに、岡本の脳に「種」を植え込む。


種、というのは、弘前が自分の娘ということを思い出すための種だ。直接思い出させるようにしてしまうと脳に悪影響のため、依頼人や第三者を通して少しずつ思い出させていく。

それが【種蒔き屋】である。