「しっかりしろ!羅李!」

鮮明に、院長の声が聞こえる。
長く付き合ってきた、あの禿げた院長の声だ。


「さっきまでの自信はどこへ行った!」

「院・・・」

「お前が消えたら、こっちは病院が暇でならん!」

あれは怒っているのではない。励ましてくれているのだろう。

羅李は苦笑して、ゆっくりと息を整えて立ち上がる。


〔なん・・・じゃと・・・?〕

「はは・・・。人使いが荒いだろう。あの禿げじじいは」

無理矢理笑って見せると、羅李は左手の手の平に右手の拳を当てる。


「我が起死回生の意気、見せてくれる・・・!」


そう言い、羅李は跳ねるようにして喰人魔に飛び掛る。先程創ったのは、対病魔用の術だ。
手にまとっているのは、かぎ爪ではなく、淡い黒の光。

手が飛び出し、一度方の肉を深く切り裂いた。

「治―――」

小さく口にし、喰人魔に至近距離まで近づき、淡い光を放つ右手を喰人魔の心臓部に押し付ける。

切られた部分が痛み出すが、それでも放すことなく押し付ける。


〔あ゛っっ・・・がぁぁっ・・・〕


叫び終わる前に、羅李はとどめの言葉を口にした。


「滅消―――!」