「斬刀(ざんとう)!」
手が伸びてくるなら、切り刻むしかない。
手甲に術をかけ、長期戦用のかぎ爪を出させる。何とか持ちこたえてくれ、と羅李は祈り、術を練って作ったかぎ爪を手に、地面を蹴った。
――
左頬に右脚、右の篭手も1つ壊れ、血が流れる。体に巻いていた鎖帷子(くさりかたびら)も、壊れそうになっている。
妖毒使いでなかったことは、唯一助かった点だろう。
(噛み千切る以外にも・・・切る事も可能か・・・)
呼吸を乱さぬよう、動きも遅れないように整える。避け続けて何分経っただろう、と数えたくもなった。
すると、ついに羅李がもっとも恐れていた事態が起こる。
「っ・・・はっ・・・!」
ヒューヒューと、喉が音を立てる。長期戦による、喘息の発作が起こったのだ。
呼吸困難の羅李は、それでも相手から目を離さない。
隙を見せたら終わりだ。
「はぁっ・・・はぁっ・・・!」
目の前が、白くなりかける。