「喰人魔の唾液には、麻酔と止血効果がある。それで、夜中に指を食い千切っても、痛みもなければ血も出ない、鎌鼬に似ているわけだ。まぁ、一気に食べられなかったのは、取り付かれた小梅さんが、必死に邪魔して制御してくれていたお陰だからだろうな」


羅李が胸の前で手を合わせる。

手と手の間から、淡い光が零れた。


「その病魔、取り出させてもらう」

〔・・・言われずとも、このような体ごとき、力の満ちたわしには、もういらぬわ・・・〕


小梅以外の人間にも乗り移り、人を食べて成長したと言う事か。だから力が強いわけだ、と羅李は思う。


その瞬間、小梅の心臓部から飛び出した肌色のものが、羅李に強く当たる。

そのまま羅李と共に窓を突き破った。

バリィィィィン!!

豪快に窓ガラスが割れる音がし、羅李の体が外に飛び出した。もう一度言うと、ここは5階だ。なので落ちれば確実に命はない。


「羅李!!」


院長が叫ぶ。そのまま羅李の体は真っ逆さまに落下する。

「っ・・・!鋼(こう)っ!」


羅李が自分の体に手を当てて叫んだ刹那、羅李の体はコンクリートに激突した。人の少ない駐車場に、石と石のぶつかり合うような音が響く。