「おっと、そういえば、羅李に頼みごとがあるんだったか」
「なんだ?」
院長は口を羅李の耳に近づけ、ヒソヒソと話す。
「実は・・・不治の病を持った子供が、この病院に来ている」
「!」
羅李はピクリと反応した。耳を研ぎ澄ませ、敏感になって話を聞く。
「ここの5階にいる女の子の患者なんだが・・・。1週間前にここに来て入院している。なんでも、一晩ごとに体の一部が1つずつなくなってるんだ」
「体の一部?」
「ああ。入院する前の3日前からだ。1日目は親指、次は薬指、次が中指って、体の先端部分から無くなっていってる。他の病院からも、同じ症状を訴える人間がいたらしい」
「ジワジワと、だな」
「見てると可哀相になる。お友達が家にも帰らず毎日毎日付き添ってるんだから」
「健気なものだ」
実際はそんなことは考えていない。羅李は病魔のことについてだけを考えていた。