夕方、それも遅い時間帯に私は一人で病院の廊下を歩いていた。


木藤は用事があるから来れないって言ってから、気晴らしを兼ねて、ある場所を目指していた。


文化祭のあった十月半ばに入院してから、もう1ヶ月以上も会っていなかった彼女の元へ。


私のいる病棟の部屋からは、ゆっくり歩いて三分も掛からないくらいの距離に病室はあった。


ひたり、と病室の前の人気のない廊下で歩みを止める。足音が消えて、雨音だけが響く。