電車を降りると、駅の構内は、平日の午後にしては珍しく人でごった返していた。

人の流れは逆方向──ホームへと向かって絶えることがなく、私はその流れに巻き込まれないように、必死に出口を目指した。

周りはほとんど若者だった。
私より少し若いくらいだろうか。

見たことのない……おそらく遠方の高校の制服姿もちらほらと見えた。


──そうだ、今日は入試だったんだ。


その瞬間、彼の顔が頭をよぎった。

その人ごみの中に彼がいないかと周囲を見回してみたが、分かるはずもない。

私はすぐに彼を探すことをあきらめた。


彼は無事に試験を受けることができたんだろうか?

どうか、うまくいっていますように……。


私は、昨晩キスをした場所を横目に通り過ぎながら、心の中で彼の成功を願った。