蒼太との恋。

それは、私にとって最初で最後の恋になるはずだった。


ひとつ年上の蒼太と付き合い始めた時、私はまだ14歳だった。

蒼太は私に一目ぼれをしたと言って、突然、私の心の中に入り込んできた。

それから、ほぼ6年。

最初こそ強引に始まった私たちの恋は、次第に、自然に穏やかに形を変え、多華子のように胸を踊らせるような激しさはなくなっていった。

だけど、お互いがそばにいるのが当たり前で、大学を卒業したら私たちは結婚するだろうと信じて疑わなかった。


それなのに、別れは突然訪れた。

まさに、青天の霹靂。


蒼太に別れを切り出された時、

「お前はこれからもっといい恋をして、幸せになれ」
と言われた。

最後に見た蒼太は泣き顔だった。


いっそのこと、大嫌いになれれば楽なのに……。


私はもう一度、他の人を好きになることができるんだろうか？

誰かのことを想って胸を焦がすことができるんだろうか？


……ありえない。


どんなに自分に都合よく想像を膨らませても、私には、蒼太以外の男の人と恋をしている自分を思い描くことができなかった。