私はストールを肩から羽織るとリビングへ移動した。

多華子が気を利かせてくれたんだろう。
リビングは暖房がきいて暖かかった。

私は2人がけのソファに身を投げた。

テーブルの上には、多華子の編みかけのセーターが無造作に置かれたままになっている。

彼に似合いそうな、鮮やかなブルーの毛糸玉。
セーターはまだ、後ろ身頃が3分の1くらいできた程度だった。

多華子は昨年末からこのセーターを編んでいるのだが、少し編んでは、
「編み目が汚い!もうイヤだー!」
と言ってそれをほどくばかりで、いっこうに完成する気配はない。

だけど、そんなことを繰り返しても、多華子は幸せそうだった。

彼との交際は高校時代から続いているというのに、いまだに『幸せな恋の真っ最中』という感じで。



……それに比べて私は、そんな気持ちをいつ頃まで持ち続けていられたんだろう?