「ごめん、また後でかけ直すから!」
まだ何も伝えていないのに。
ソウはそう言うなり、電話を切ってしまった。
「ちょっと……待って、ソウ!」
そんな私の声もソウには届かず、携帯からはプーッ、プーッという機械音だけが聞こえてきた。
…………もう、信じられない。
私はデッキの壁にもたれかかって大きなため息をひとつついた。
まさか、ソウも同じことを考えていたなんて。
そう思うと少し嬉しくて頬が緩んだけれど、そんなにのんびり構えてもいられない。
とにかく、私もそっちへ向かっていることを伝えないと──!
そう思ってすぐに折り返し電話をかけたけれど、今度はこちらの新幹線がトンネルに入って携帯電話は圏外になってしまった。
このまま連絡がつかずにすれ違ってしまったらどうしよう……。
そんな、一抹の不安が胸をよぎる。
ふと、私は真正面の壁に目をやった。
私の目線の高さに貼られた広告ポスターの下に掲示されているのは、新幹線の時刻表──。
私はその時刻表の前に屈み込むと、ソウがいるH駅の文字を探した。
今の時間は──19時35分。
時刻表には、上りも下りも、全ての東海・山陽新幹線の時刻が掲載されていた。
私は、その時刻表上の、H駅から東京方面へ向かう上り列車の発車時刻をゆっくり指でなぞっていった。
ソウは、さっきの電話で『今から新幹線に乗る』と言っていた。
だとしたら、それは《のぞみ56号》しかない。
そして私は《のぞみ55号》に乗っている。
──絶対にすれ違ったりなんてさせない!
新幹線の揺れるデッキで、まだ鳴らない携帯を握りしめながら、私は必死に時刻表の数字をたどり始めた。
まだ何も伝えていないのに。
ソウはそう言うなり、電話を切ってしまった。
「ちょっと……待って、ソウ!」
そんな私の声もソウには届かず、携帯からはプーッ、プーッという機械音だけが聞こえてきた。
…………もう、信じられない。
私はデッキの壁にもたれかかって大きなため息をひとつついた。
まさか、ソウも同じことを考えていたなんて。
そう思うと少し嬉しくて頬が緩んだけれど、そんなにのんびり構えてもいられない。
とにかく、私もそっちへ向かっていることを伝えないと──!
そう思ってすぐに折り返し電話をかけたけれど、今度はこちらの新幹線がトンネルに入って携帯電話は圏外になってしまった。
このまま連絡がつかずにすれ違ってしまったらどうしよう……。
そんな、一抹の不安が胸をよぎる。
ふと、私は真正面の壁に目をやった。
私の目線の高さに貼られた広告ポスターの下に掲示されているのは、新幹線の時刻表──。
私はその時刻表の前に屈み込むと、ソウがいるH駅の文字を探した。
今の時間は──19時35分。
時刻表には、上りも下りも、全ての東海・山陽新幹線の時刻が掲載されていた。
私は、その時刻表上の、H駅から東京方面へ向かう上り列車の発車時刻をゆっくり指でなぞっていった。
ソウは、さっきの電話で『今から新幹線に乗る』と言っていた。
だとしたら、それは《のぞみ56号》しかない。
そして私は《のぞみ55号》に乗っている。
──絶対にすれ違ったりなんてさせない!
新幹線の揺れるデッキで、まだ鳴らない携帯を握りしめながら、私は必死に時刻表の数字をたどり始めた。