自然に口から出たその言葉に、自分でも驚いた。

それは最後までつき続けた嘘。

だけど、こうでも言わないと、ソウを強く振り切ることは出来なかった。

言葉を失い固まってしまったソウを見ながら、心のどこかで、私はホッとしていた。

あぁ、私が嘘をつき続けたことは、決して間違いじゃなかったんだと。


「じゃあ、サヨナラ」


精一杯の笑顔を作り、私はゆっくりと助手席のドアを開けた。

車を降りようとすると、背中からソウの叫びにも似た声が聞こえてくる。

「だったらせめて、最後に見送りに来てよ! 今日の夕方、ウーさんの店で待ってるから!」

私は何も言わずに車を降りて、そのドアを静かに閉めた。

もう私には、振り返ってソウに見せてあげられる笑顔は残っていなかった。

そのまま、ぬかるんだ駐車場を、前を見つめたまま足早に出て行く。


ゴメンね、ソウ。

今日は、ウーさんの奥さんの月命日。
『ラーメン うちだ』は店休日なの。


──だから、ここで、本当にお別れなんだ。