私は、最初にルールを決めたときのことを思い出して、思わず苦笑してしまった。

『勝負に勝った方が、幸せになれる』

──全くその通りになったね、ソウ。

ソウは勝負に勝って、
彼女と仲直りをして、

まさにこれから幸せになれるんだ。


「ねぇ、握手しよう?」

だけどソウは手を出そうとせず、何か言いたげな顔で私を見ていた。

「もう決めたの? ……俺が何を言っても無駄なの?」

「うん」

ソウに見つめられるだけで、ソウの声を聞くだけで、私の体は震えていた。

……もうこれ以上、ソウへの気持ちを抑えて笑い続けることは辛かった。

私は強引にソウの手を握った。

そして、大袈裟なほど大きく2回、3回とその手を上下に振る。

「ソウは、彼女を大事にしてあげて。そして私の分も幸せになるんだよ」

「……だけど」

「ソウ!」

ソウが何か言いかけたのを、私は声を荒げて止めた。

そして、ソウの目を見ながら、ゆっくりと言った。

「約束したでしょ? 三度目のキスをしたらゲームオーバー」

それはまるで、自分に言い聞かせるように。


「でも……」

「年上の言うことは聞きなさい!」