【5日目・2月19日】

雨が上がったのは、日付が変わった翌日の朝方だった。

私たちはそれまで一緒に車の中で過ごした。


「朝までここで雨宿りすることになるって分かってたら、俺の部屋に行ったのにね」

「そう言うわけにはいかないでしょ……」

「まぁ、それもそうか」

ソウは笑った。


──そして、私たちに別れの時が訪れる。


「じゃあ、そろそろ始発の時間だから、帰るね」

言い出したのは私。

「家まで送るよ」
「ううん、ここでいい」

間髪入れずそう言うと、私は姿勢を正して、ソウの方へ向き直った。

「完敗だったけど……楽しかったよ、ソウとの《ゲーム》」

「でも、最後のキスは俺も名前呼ばせたりして反則だったから。あれは引き分けだよ」

「負けでも引き分けでもいいの。どっちにしても私の負けなんだから」

「じゃあ、引き分けってことで!」

どっちでもいいって言ってるのに、完敗の私に気を遣っているのか、律儀に訂正するソウがおかしかった。


「いっぱい泣いたけど……ソウのおかげで蒼太のことも吹っ切れそう」

「……それは強がりじゃなくて?」

私は黙って頷いた。

昨日はあんなに泣いたのに、何故か心は清々しくて。
きっと、蒼太のことでこれから泣くことはないような気さえした。


私は笑ってソウに手を差し出した。

「ソウ、勝利おめでとう!」