それは桜…ではない。

「桜と青空くんって付き合ってると思ってたよ」

なんてよく言われるが、俺の彼女は桜じゃない。

こんなに一緒にいるのに、どうして付き合ってないのか、って…なんだろうな…ここまで近くにいると桜の魅力っていうのが、俺にはわからなくなってるのかもしれない。

確かに桜には、魅力があると思う。笑顔だって可愛いし、顔だって並以上だと俺は思ってる。

でもな…それは「好き」とは違う感情なんだよ…

「…てる?青空っ!青空ーっ!!」

バシッ

「…ってぇ」

渇いた音がしてハッと現実に意識を戻すと、拗ねた顔をして俺を見つめる桜がいた。

「…何?」

「何?じゃないでしょ!私が何回も呼んでるのに気付かないし…こんなに可愛い幼なじみが話してるっていうのにさぁ…」

ふう、とため息をつき俺を視界に入れつつも、下を向く。

「なーに言ってんだ。寝言は寝て言え。そんなに眠いなら保健室連れてってやろうか。」

頭をぽんぽん、とたたきながら呆れた物言いをする。

「!!」

すると下を向いていた桜は、顔を赤くしながら俺を睨み

「お母さんの前ではへらへらしてるくせに、私の前では何?もう青空のばかっ!!!」

「桜っ…」

俺が呼び止めるのも虚しく、桜は逃げるようにして先に行ってしまった。

「はぁ…女って難しいな…」