「ささ、入ってー」




美沙子さんに呼ばれて
中に入ると
すごくいい匂いがした


木のにおいだ





居間につき
向き合って座った




「で、名前は?」


「由莉です!」

「由莉ちゃんかー


で、由莉ちゃんはどうしたの?」




話が読めなくて
首をかしげていると
美沙子さんは笑って説明してくれた







「春がここに人を連れてくるときは
だいたいその子に何かあるのよー」



「なにか?」


「んー、例えばその子の家が火事とか
家出中だとか」




家出という言葉に
びくっと肩を上げると
美沙子さんは「家出かー」と
すぐに気づいてしまった