「それから、敬語も禁止。……夫婦なんだから必要はない」
「…………はい…じゃなくって、う…ん…？」
敬語かぁ…。
それは、なかなか難しい、
要望だなぁ…(苦笑)。
まぁ、頑張ってみよう…。
「茉希。寝るぞ」
「あ、は…う、うん!!」
やっぱ、無理!!
敬語がいい…。
ベットに入ると悠翔…は、
あたしに触れることもなく、
背を向けて、完全に寝る体勢…。
するとすぐに、
寝息が聞こえてきた。
「手を出すつもりはないの…？」
期待なんかするわけないんだけど、
ちょっとは…緊張してたんだよ？
ボソッとそう呟いてあたしは、
安心して眠りについたー…。
「い、おい!! 茉希!!」
翌朝。
誰かの声で目が覚めた。
誰…？
ゆっくり目を開くと、
いきなり視界には、
悠翔のドアップが!!
「ふ、ふきゃあっ!!」
「なんちゅー声だしてんだよ」
「び、びびび、びっくりしたぁ〜!!悠翔、近いっ!!」
「顔真っ赤。風邪か？」
………は？
悠翔、もしかしなくても、
天然なの!?
顔が真っ赤なのは、
あなたのせいです!!
「か、風邪とかじゃないからっ!!とりあえず顔、近いから離して!!」
「そうか…？」
悠翔はゆっくりと、
離れてってくれた…。
た、助かった!!
それにしても悠翔、
カッコイイなぁ…。
こういう人を、
“イケメン”って言うのかな??
「茉希？」
「あ、う、うん!!何？」
「ボーッとしすぎ。本当に大丈夫か？」
「だ、大丈夫だよっ!!それより朝ご飯!!作るね!!何食べたい？」
「茉希…料理出来んの？」
「少しなら」
花嫁修行でやったから、
たぶん出来る!!と思う…。
「朝飯…」
悠翔が微妙な反応をしたことに
あたしは、気づいてしまった…。
「悠翔？」
「和食」
「えっ？」
「和食が、食いたい」
「和食？ わかった!!作って来るね。時間大丈夫？」
「あぁ」
「そっか」
和食を作ると悠翔は、
驚いたようにまじまじと見た。
おそらく…
予想外だったのだろう。
ここまでちゃんと
作れているとは。
「悠翔…食べよ？」
「あ、あぁ…いただきます」
ﾊﾟｸｯと一口。
「ど、どう…？」
「うまい」
よかった〜。
「行って来る」
「行ってらっしゃい」
ご飯を食べるとすぐに悠翔は、
会社へ行く。
「あ、そうだ。茉希」
「はい？」
家を出る寸前。
思い出したように悠翔は。
「それ、つけといてね」
そう言って、ポンッと、
投げ渡されたのは…。
「指輪…」
指輪、だった。
「結婚指輪」
そう言って悠翔は、
会社に行ったー…。
