インチキ霊媒師って──当たってるんじゃ?
そう思ったが、口に出すとまた無駄にモメそうだったのでやめた。
要するに。
証拠を持って、ここの偉いさんたちに営業をかけようと、そう兄は考えているのだ。
「依頼もないなら、無理してこんなことしなくていいじゃねぇの?」
元々、そういう経営方針だったはずだ。
頻繁に仕事をこなさない分、来た時にがっつり稼ぐ。
それで、あの事務所は成り立っているはずだった。
「甘いぞ、孝輔。いつ何時、仕事が来なくなるともかぎらん。積極的な営業も必要なのだ」
拳を作って、直樹は熱弁を振るう。
珍しく、まともなことを言っていることに、孝輔は驚いた。
熱でもあるんじゃないか、と。
「……ん?」
しかし。
あることを思い出した。
最近、兄の口からよくボヤかれる──アレ。
「セルシオの次は、何の車を狙ってるんだ?」
孝輔は、半目開きで聞いてみた。
「そうだなー、やっぱベンツかな~!」
にへらっと、ヤニ下がる直樹。
「…………」
グワゴギャン!
孝輔の無言ラリアットは、油断しまくっていた兄の喉元に見事にヒットしたのだった。