「ほうほう、いたずらっことな」
サヤの説明に、直樹は非常に興味を示す。
その話なら、昨日孝輔も聞いていた。
「で、それは…幽霊かね?」
金の匂いでも感じたのだろう。
ずずずいと、兄はサヤに詰め寄る。
「何なのでしょう、私にもよく分かりません。死者の霊ではないと思います…」
彼女の答えは、的を射ていなかった。
ただ、どんぶり勘定で結論づけるとするならば、あの停電は物理的でも人為的でもない、ということか。
「ただ…笑い声と、楽しそうな気配は感じました。いたずら好きの、若い精霊ではないかと」
終始笑顔のまま、彼女は推理を終了した。
いたずら好きって。
どうも霊に関して、サヤは甘い判断が多い気がする。
前回の九十九神の時といい、霊の存在による『利害』を考えていないのだ。
いたずらで商売の邪魔をされるのでは、デパートもたまったものではないだろうに。
「大手○○デパート、謎の停電事件続発」
うさんくさい週刊誌の見出しみたいな言葉を並べながら、ニヤリ──直樹の口の端が上がる。
「いける……稼げそうだ」
ただ。
直樹のように、『利害』だけを最優先で考える男も、どうかとは思うが。