「きました!」

 物凄い速度で、延長コードの中を何かが飛んでいく。

 サヤは心臓が口から飛び出しそうになりながら、そう声をあげた。

 瞬間的に、倉庫の照明がまたたく。

「抜け!」

 ケーブルから離れたところにいる孝輔が、自分の端末をたたきながら、彼女に叫ぶ。

 自分の端末の方に興味を示されないように、あえて離れているのだ。

「はい!」

 延長コードを引っこぬいて、サヤは自分の出来うる最速の動きで回収した。

 たったこれだけのことでも、明日にはきっと筋肉痛になるだろう。

「きたな、グレムリン」

 眼鏡が、キラーンと蛍光灯の明かりを反射する。

 囮のところに立っている直樹が、手袋の手をひらめかせた。

「滅せよ!」

 一体、何の番組に影響を受けたのだろう。

 両手を一度、空に掲げ。

 その手のひらから、何かを放出するように、一気に端末に向ける。

 勿論。

 その手からは、何も出ていない。

 が。

『ウギャギャギャギャギャ!』

 S値を落とされ始めたのか、囮端末からは物凄い絶叫があがる。

 素晴らしいタイミングで構成される――寸劇を見ているようだった。

 悲鳴は、サヤの胸を痛ませたが、今回については彼女は止めることができない。

 止めたところで、自分には何も出来ないと分かっているから。

 ただ、やはり精神的な悲鳴もサヤには届くため、普通の人の倍は影響がきてしまうのだが。

 若く、情緒のない精霊は、害獣のように駆逐されてしまうのか。