「なぬ!」

 案の定、直樹が不満の声を上げた。

 孝輔の立てた、グレムリン退治計画が気に入らないのだ。

 しかし、その姿はまったく迫力がない。

 シュークリームを子供のように口の中に押し込み、頬にはクリームがついている状態だった。

 ご希望の、デパ地下のお菓子とやらだ。

 テストの帰り際、サヤにシャツを引っ張られた。

 孝輔はすっかり忘れていたし、覚えていたとしても買っていってやる気はなかったのだが。

 捨ておこうとしたのに、彼女がどうにも気にかけているようだったので、しょうがなく付き合うことにした。

「ええと、このラ・セニョンの……」

 甘ったるい匂いの充満する菓子屋の前で、絶対日本語でも英語でもないような奇妙な横文字をサヤは注文している。

 意味わかんね。

 孝輔は、柱にもたれて舌を出した。

 甘いものはキライというわけではないが、わざわざこじゃれた菓子屋に買いに行く気にはならなかった。コンビニで十分だ。

 それより、テストで食いついてきたグレムリンを、どうやって捕獲するかが問題だ。

 1.他の電気機器に逃げられるのは、1メートル前後。
 2.珍しい装置、プログラムに興味を示す。
 3.自分でS値はいじれない

 以上の情報を元に、孝輔は対応策を考えなければならない。

 一番難しいのは、1番だろう。

 逃げられないために、エサに食いついている間に距離をとらなければ。

 考え込んでしまった彼は、サヤにまたもシャツを引っ張られるハメとなったのだった。