「んー」

 さわやかなサヤとは対照に、孝輔はうなり声を上げた。

 精霊の情報により、彼も仕事をやりやすくなったのかと思いきや、そうでもないようだ。

「何か問題でも?」

 兄が苦手とするのだから、同じ方式を受け継ぐサヤも苦手な相手になるだろう。

 説得や環境の変化や浄化では、決して消えそうになかった。

 しかし、ここの人たちは違う。

 まさしく近代の技術を用いているわけだから、真正面から対峙できそうなのに。

「厄介だな、こいつ」

 孝輔の操作している端末の画面には、グレムリンの文字。

 普通のインターネットサイトではなく、その筋のしっかりしたデータベースなのだと教えてくれた。

 画面には、ぎっしりとした文字情報。

「厄介?」

 サヤが首をかしげると、孝輔は人差し指を1本立ててみせた。

「1つ、動きが非常に素早い。うちにいる老体では、追いきれない」

 至って真剣な表情だったが、何か不穏な表現が含まれていなかっただろうか。

「私は、ピチピチの28だ!」

「2つめは……」

 所長席の声を無視して、孝輔は二本目の指を立てた。

「こいつは、電化製品を自由に行き来できる。電源ケーブルでつながっていたりすればどこへでも。たとえ離れていても、1メートル以内くらいなら平気で飛び移れる」

 要するに──逃げ放題。