「取れたぞ!」

 バターーン。

 無駄に勢いよく、外出していた直樹が帰ってきた。

 手には大きな封筒。

 よく見ると、デパート名が印刷されている。

 あの仕事が、昨日の今日でもう取れたのか。一体どういうたぶらかしかたをしているのかは知らないが、営業力は大したものだ。

「詳しい資料ももらってきた、目を通しておけ」

 ほれ。

 ブーメランのように放り投げられる封筒を、孝輔はあわててキャッチした。

 それが資料の渡し方かよ。

 紐で封をするタイプだったので、さかさまに受け取っても、書類をバラまかずに済んだのが幸いか。

 中を見ると、停電の時間や頻度が細かく記載されていた。

 それ以外の被害状況も記されている。

 なになに?

 自分の席に腰掛けながら、目を通し始める。

 気になっていたのは、停電以外の被害。

 他に一体、何をやらかしているのか。

 パソコン、電子レンジ、洗濯機、電気スタンド、エアコン。

 いずれも故障や動作不具合、ものによっては修復不可能に至っているものまである。

 内部の配線が、グチャグチャになったものや、ICがイカレたもの。ショートしたもの。
 被害の内容はさまざまだ。

 時間による発生頻度に偏りはない。
 朝、被害が発覚しているものも多いが、それはおそらく夜のうちに起きたものだろう。

 警備を強化したが、デパート側は原因を突き止められていなかった。

 そりゃまあ、そうだな。

 アイアイの画像を思い出す。

 まさか、あんなサルモドキがグチャグチャにしているとは思うまい。