サヤが、考え込んでいる。
そりゃあ、彼女も人の子なのだから、何か考え込むこともあるだろう。
ただどちらかというと、普段はにこやかな状態でいることが多いので、それ以外の様子を見せられると、つい目を引いてしまうのだ。
「どした?」
『アイアイ』(命名:吉祥寺サヤ)をプリントアウトしながら、孝輔は声をかけた。
大仕事のほとんどが終わっていたので、あとはこれをまとめて直樹に渡せば、とりあえずひと段落つく。
あとは、兄が例のデパートに殴りこんで、仕事を奪ってこれるかどうか、だ。
「あ、いえ…何か思い出せそうなんですが」
うーん。
サヤは、プリンタから出てくるアイアイをじっと見た。
彼女を悩ませているのは、このサルモドキだったのか。
しかし、うまく知識と照合できなかったのか、長い長いため息をついた。
この世の中に、どれくらいの数の精霊がいるのかなんて、孝輔は知らない。
だから、彼には分類も出来ない。
そんな彼からしてみれば、サヤの能力は大したものだ。
いちいちへこむことはない。
そういう慰めの言葉を言うのは、少々苦手だ。
そう、ほんの少々。
だから、頑張れば言えないことはない。
「…気にすんな」
頑張ってみた。
上手に言えなくても、誰にも責められる筋合いはなかった。
たとえ、デパートダッシュで死にかけている男のメガネが光ろうとも──