「何をしてるんですか?」
事務所に戻った孝輔が、早速端末相手に作業をしているのを見て、サヤは声をかけた。
直樹の方は、自分の机でだらけていた。
デパートダッシュがこたえたのだろうか。
ディスプレイに浮かび上がる画面は、R値とかS値とか、そういうものの画面とは、少し違う気がする。
「それっぽくしてる」
手を止めないまま、孝輔はそう答えた。
白い物体が、そこには映っている。
サヤが見たものと、とてもよく似ていた。
「いま…」
孝輔がマウスを操作して、上矢印のボタンを押していくと──その白い映像は、だんだん陰影を浮き上がらせる。
「いま、人工的にR値増加のフィルターをかけてる」
R値──霊的な存在の、出現能力。
この値が高ければ高いほど、多くの人の目に見えるようになる。
理屈はいまいち分からないが、孝輔はわざと霊の姿が見えるようにしているのだ。
そうすることが、直樹のいう『激写』になるのだろう。
モンタージュのように出来上がっていく姿を、サヤもじぃっと追いかけた。
遠かったのもあるが、彼女の能力でもそれをくっきり見ることが出来なかったのだ。
元々、R値の低い霊だったのだろう。
だんだん。
分かりやすい形になってきた。
そして、ついには。
大きく丸い目。長い腕と尻尾。
ぎざぎざの歯がついている大きな口。
人ではない、動物に近い姿が現れる。
歯の部分さえ除けば、サヤはあれに似ていると思った。
「アイアイ…」