『今日のランチは…』
お気に入りのミニトートバッグを開けると、中にはお弁当が入っていた。
ランチボックスの中には、海苔を巻いていないおにぎりと、昨日の残り物の煮魚と、形の崩れた卵焼きが入っていた。
『はあ……。』
思わず溜息を漏らしたが、こんな風なお弁当にももう慣れた。
私の家は、いわゆる《母子家庭》というやつで…。
お弁当も自分で作っている。
世間一般から見れば、苦労してると思われているらしいが、実際そうでも無い。
…確かに、父は不慮の事故で死んだと聞かされている。また、母はホステスをしている。
母がホステスをしているおかげか、お金には困らないし、平凡な家庭よりは裕福だと思う。
只、母は、父が死んでから(?)変わった事以外は。
昔は家事もしてくれてたし、私のことも可愛がってくれてた。
なのに。
なのに、今では、母は私に目もくれずホステスの仕事に夢中になってる…
…正しくは、‘あの男’に。
……‘あの男’の事は、思い出したくも無いし誰かに話す気もない。全くない。
ましてや、他人に「可哀相」だの、「大変だね」だの、干渉されるなんて絶対にイヤ。
…とにかく、私は早く高校を卒業して、自立したい。
否、自立する。
母に縛られるのにも懲り懲りだ。
とにかく私は、《今の自由》を大切に過ごしたい…
後二年。
私はどんな高校生活を送るのだろうか。