再び先生が黒板にチョークでなにやら文法で書き出して授業が再開になっていた。僕はマニュアル本を、しゅんは先ほどの赤い本と五線譜を出して勉強(?)をはじめた。

昼になった。何誘うわけでもなく昼食は自然と後ろの席に居るしゅんと机を共にしている。特に何も喋らないしゅんにたいして一方的に僕は話しかけていた。そして大体この時間帯になると、

「おう。なんだ今日も乙女姉さんのお弁当かい?」
登校してきた。名前をみきという。「総理大臣なる」といった男だ。
しゅんと同じく小学校から一緒で今日までに至る。朝にとても弱く寝起きが悪くいつもこの時間に登校する。

三国志を愛読し政治、経済、思想、哲学に明るく同年代とは思えな知識に溢れている。
とにかく言葉が多い。口喧嘩となればあらゆる角度から攻めてくる言葉に圧倒され僕は一度もこの喧嘩には勝つことができないでいた。

その相手は同年代の学友に留まらず、中学時代では当時の担任の先生にその矛先が向かった。その日下校途中コンビニで買い食いをしていた男子生徒が発覚して学年全員で体育館に呼ばれ先生から説教を受けていた。

僕は黙って下を向いて立って話を聞いていた。すると隣に立っていたみきが先生に猛攻撃を仕掛けたのである。
内容は、下校途中買い食いする奴と下校してからコンビニで買い食いをする奴の違いとかであった。

この押し問答はその場で解決せず全員解散したのちみきだけ生徒指導室に呼ばれ担任の先生と話し合っていた。
いやもう話し合いなんてもんではなく国会中継の党論のごとく次々に質問をぶつけるみきに先生はたじたじだった。

ぼくとしゅんは心配になって生徒指導室の前で待っていた。結局決着は付かず他の先生が間に入ってその日は終わったがしばらくみきは学校に来なかった。