決勝の相手は魔裟斗が一度負けているとお父さんが言った。僕は息を飲み試合を見守った。魔裟斗が何か攻撃をもらう度ひやっとした。どれもらっても一発でやられるんじゃないか?試合はどんどん進んでいった。とにかく魔裟斗の攻撃が当たれば倒れろーと心の中で叫んだ。しかし相手はそう簡単にやられてくれはしなかった。
どうなるんだろう?どうなるんだろう?試合はヒートアップしていた。すると

バチン!

まばだきを許さない高速の左フックが相手に当たった。膝がガクンと折れてマットに大の字で倒れた。カウントが始まる。
「ワン、ツー、スリー・・・」
早く進め~それが僕の心境だった。どうなるんだろうと早く進めがせめぎ合い僕の興奮がどんどん高まっていた。そして、
テン!
 
同時にレフェリーが手を交差した。
魔裟斗がガッツポーズを上げセコンドの人たちと抱き合っていた。
会場の大歓声もテレビからでも十分伝わった。誰もが望んだ瞬間だったんだ。
程なくして魔裟斗にベルトが巻かれた。2003世界王者のベルトだ。
すごい。これが僕の素直な気持ちだった。胸はまだドキドキしている。お父さんが何か言っていたが僕は直ぐに部屋に向かった。
机に向かい原稿用紙に鉛筆を走らせた。

「k―1ファイターになる」

六年一組 越前 芳樹
これが僕の夢。そしてはじまり。僕はこの日1日の感動と魔裟斗について書き綴った。魔裟斗のようにかっこよく魔裟斗みたいに強くなりたい。
その後直ぐに僕は格闘技のジムに入門した。
それから4年後物語りはそこから始まる。