女友達はたくさんいた。

彼女たちの恋愛相談には何度ものってきたし、こんな時の慰め方はよく分かっているつもりだった。

だけど……

目の前で深月が泣いている。

その姿にオレは戸惑っていた。


深月との付き合いは長い。

深月は、いつも笑ったり、怒ったり、困ったり、その表情を忙しく変える。
だけど、オレは、深月の泣き顔を一度も見たことがない……。

そのことに、初めて気がついた。

……目の前の深月に、どう声をかければいいのか分からない。

コイツに何を言ったらいいんだ?

かけるべき言葉が見つからないまま、オレは一歩一歩深月に近づいた。
深月はまだ振り返らない。


そして、
手を伸ばせばもうその肩に手が届く位置まで近づいたとき、


深月が背中を向けたまま、オレに言った。





「ヤマタロでしょ?」