ボールが悠里に渡ると本当に楽しそうだ。


あ、そうか。
櫂兄が来る前にもサッカーの試合見てて、リモコンの奪い合いしたっけ…


またまた、ゴールを決めた悠里をじっと見詰めていると、それに気づいた悠里が顎で水道場に行くように合図してきた。


へ?


いいから、来いとも言いたげな、いつもの俺様な顔に戻っていた。


「八重樫君、やっぱりカッコいいね!」


テニスの授業どころではないカナは、少し離れた男子ばかり見ていた。


「あれ!?八重樫君たち、もう終わり? あ、そうか交代か…」


悠里のチームと交代で、クラスの残り半分の男子がグランド入っていった。


「キャー!!次は棗(なつめ)君ちだよ。テニスなんかしてられないよ、こりゃ!」


棗君はこちらを見てにっこりと笑ったような気がした。


「ね、朝子、みた?棗君こっち見て笑ってたよね!!あーもーどうしよ~素敵なメンズばかりで目移りしちゃうわ」

「カナ、好みがバラバラすぎだよ。カッコ良ければ、いいって問題じゃないでしょ」


悠里は性格悪いし俺様だし、棗君だって体育倉庫の裏であんなこと…

例のように西園寺に呼び出された帰りに見かけた棗君と3年の先輩のことを思い出した。


「あっヤバ!!」


こんなことしてる場合じゃない。早く行かないと!
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