通夜の準備が静かに進んで行く。
紙の六文銭と白装束。
この世からの決別する為の旅支度がみずほを飾る。

納棺師が死化粧をしようとしていた。
俺はコンパクトをその人に託した。


コンパクトを開けた時、あの文字に息を詰まらせたようだ。
暫くそのままでいた納棺師に、俺は首を振った。


「両親は知らないんだ」
俺があまりにも辛そうだったからかなのか、納棺師は頷いてくれた。


(――そう……
せめて最期くらいは俺の贈ったコンパクトで化粧してやりたかった)


――みずほ愛してる!!
俺はあの日言えなかった想いを伝えたくては、みずほを見詰め続けた。