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 夜が来る。

 メイは、戸惑っていた。

 夕食が終わって後かたづけをしていても、カイトはそばから離れてくれなかった。

 今日は本当に一日、ずっとそうだったのだ。

 この後片づけだって、最初は「すんな!」と言われたのである。

 久しぶりにその言葉を聞いた。

 どうしても片づけをしないと気持ちの悪いメイは、何とかお願いして片づけさせてもらったのである。

 その間、ずっと監視されていた。

 後かたづけが終わって、濡れた手をタオルで拭きながら振り返ると、すぐにカイトに手を捕まれた。

 もう、これ以上の仕事をさせないという確固たる意思の背中が、彼女を二階に引っ張っていく。

 あ。

 どうしよう。

 メイは、物凄く心配になった。

 今夜、自分はどこで過ごせばいいのか分かっていなかったのである。

 いままでなら、彼の部屋の前を通り抜けて、奥の方にある客間で夜を過ごしていたのだ。

 しかし――彼らは、今日婚姻届を出してきたのである。

 ということは。

 夫婦なのだ。

 カァッ。

 恥ずかしさに体温が上がる。

 夫婦ということは、同じ部屋で寝泊まりするということになるのではないだろうか。

 いや、カイトは部屋で仕事をするかもしれない。
 その時に、自分の存在で気が散るのではないだろうか。

 いろんな憶測が、頭の中で飛び交った。

 ついに、カイトの部屋の前に到着する。

 彼が、ドアを開けようとした時。

 メイはビクリと震えてしまった。

 彼は動きを止める。

 そして、ゆっくりと振り返った。

「あ、あの…私…」

 結婚した、と言っても、したてホヤホヤだ。

 しかも、昨日の段階では、こんなことになるなんて思ってもいなかったのである。

 そんな突然に夫婦になったからと言って、当たり前みたいな顔をして、同じ部屋に入っていけなかった。