もしそうだとしたら、カイトはとても彼女と結婚したいと思っているように感じられてしまうのだ。

 しかし、否定する材料は全然なかった。

 それどころか、いきなり婚姻届を持って帰ってきたカイトが、余計に裏付けているような気がした。

 そんな。

 思い返してみても、自分がそんなにまで彼に好かれる理由に思い当たらないのだ。

 いつも、怒鳴られてばかりだった。

 彼にとって自分が有益だとは、とてもじゃないが思えない。

 なのに。

 どうして。

 メイは、切ない目で彼を見つめた。

 どうして、私を好きになってくれたんだろう。

 でも、それを聞いてもカイトは答えてくれないような気がした。彼の口から、そんな言葉が出てくるところが、想像できなかったのだ。

 メイが、一人考えに耽っている間に、事態は進展した。

「ああ…いけませんねぇ。ここに何も書いてありませんよ…ほら、ここ」

 そう言って、職員は婚姻届の端の方を指した。

「婚姻届けには、必ず証人がいるんですよ。夫になる人と妻になる人の一人ずつ…これが記入してありませんと、申し訳ありませんが受け付けられませんねぇ」

 どなたか成人されている方に、記入してもらって来てください、と彼は書類をカイトに返すのだ。

「てめーが書け!」

 しかし、彼は怒ってしまった。

 まさかそんなものに、婚姻届の提出を阻まれるとは思ってもいなかったようだ。

「そんな…出来ませんよ。親御さんでもかまわないんですから…どなたかに書いてもらってきてください」

 彼の剣幕に、逃げるように相手が手の先だけで用紙を返してくる。

「だから、用紙を取りにこられた時に、書き方を説明すると言ったじゃないですか…掴むなり行ってしまわれるから」

 カイトに睨まれて、職員の人はほとほと困ってしまったようだ。

「クソッッ!」

 怒鳴るなり、カイトは用紙を奪い返した。

 そして、途中にいるメイを捕まえて、再び車に引き戻した。