あ?

 何故、そんな反応を返されるのか分からずに、半瞬、止まった。

 しかし、分かった。

「…!」

 カイトは――全裸だったのだ。

 慌てふためいて、服を着る。

 しかし、全部着ているほど余裕はなかった。

 ガルガル言いながら、とにかくジーンズまでをはいた。

 もどかしくてしょうがないのだ。

 そして。

「きゃっ!」

 メイは悲鳴を上げた。

 台所に立つ彼女を、背中から抱きしめたからである。

 こらえきれるハズがなかった。

 こうしていないと本当に現実か、まだ分からない気がしたのだ。

 けれども、現実だと分かってくると、もっとぎゅっとしたくなる。

 この抱いた感触と温度と匂いを、とにかく、何でもいいから離したくなくなったのだ。

「あのっ…あっ…危ないです! お鍋熱いですし…」

 しかし、彼の腕にまったく慣れない裏返りかけた声で、メイは抵抗した。

 身体で抵抗しないのは、危ないからだけだろうか。

 ムッッ。

 カイトは、拒まれたようでイラッとした。

 だから、もっとぎゅうっと抱きしめる。

「ああっ! おみそ汁、煮立っちゃいます…」

 声が懇願に変わる。

 けれども、手放せなかった。

 ようやく、メイを抱きしめることが出来るというのに、みそ汁ごときに邪魔をされてたまるもんかと――本当にそう思っていた。