が。

 忽然と、目の前からカエルの皿が消えた。

 箸が、行き場を失ってしまう。

 皿は―― 長い指に掴まれていた。

 隣だ。

 えっ?

 驚いてそっちを見ると、カイトは乱暴な箸の動きで肉を掴むと口の中に突っ込んでいたのだ。

 カエルを。

 ためらいもなく、ばくばくと食べている。

 あっけ。

 しばらく、呆然とその姿を見ていた。

 彼は、カエル料理が好きでしょうがないのだろうか、などとバカなことが頭をよぎるが、そんなはずはなかった。

 あっ。

 お酒も飲んでいないのに、胸の中にぱっと熱いものが広がる。

 メイの代わりに、食べてくれているのだ。

 彼女が苦手そうにしているのが、きっと分かったのだろう。

 カイトの横顔は、とてもじゃないが味わっているものには見えなかった。

 時々水を飲んで、流し込むような動き。

 ジン。

 胸が熱い。

 やっぱり、こんなに、優しい人なのだ。

 言葉はないけれども、こんなにも相手のことを思いやる人なのである。

 きっと、みんな彼のことを誤解している。

 カイト用翻訳機をつければ、みんな片っ端から彼に撃ち抜かれてしまうだろう。

 メイのように、恋に落ちてしまう女性もたくさんいるはずだった。

 粗雑な言葉や態度の裏側に、優しさが山のようにひそんでいる。

 彼女だって、全部見つけているワケではない。

 でも、ごく一部であったとしても、この騒ぎなのだ。

 心をたくさん持っていかれてしまうくらい。