商品化することさえないゲームに、ご苦労なことだ。

 この熱心さを、いま取りかかっている市販用ゲームに向ければいいものを。

 カイトは、出来上がったMAPに手を加えながら、大筋のプログラムとリンクしていった。

 そうしているうちに、すぐに夕方になる。

 本当にすぐに、だ。

 仕事納めだからといって、特別なことは何もない。

 社員を集めて訓辞をたれるようなことは、カイトが大嫌いだからである。

 大掃除は、明日清掃会社が入ることになっていた。

 しかし、開発室だけはその対象から外れている。社外秘ファイルの宝庫だからだ。

 開発室の連中は―― 余りにその管理がズサンだった。

 だから、この鋼南電気のゴミためこと開発室は施錠され、また一年ホコリを積み上げるのである。

 本当はスタッフが、それぞれ分担を決めて大掃除をすることになっているのだが、一人もその気がおきないようだ。

 その上、定時を過ぎたと言うのに、誰も帰ろうとはしない。

 まだ忙しく、仕事を続けている。

 何か納期の迫っているのがあったかと、カイトは考えたが、思い当たるものはなかった。

 それ以上気にすることはしなかった。

 また、彼は黙々とプログラムを組んだのだ。

 9時。

 その時間を、過ぎたところまでは覚えていた。

 まだ半数以上のスタッフが残っていた。

 あちこちに小集団を作ってミーティングをしているように見えては、ばっと散会して作業をしていた。

 それがようやく静かになったのが、9時過ぎだ。

 カイトは、ほとんどの作業を終えていた。

 やっていないのは、ラストのチェック。

 作成したゲーム自体を起動させる。

 これまで自分がクリアしたデータで、そのラスボスとの戦いのチェックをしようと思ったのだ。

「…!」

 カイトは驚いた。

 画面上に、タイトルロゴが現れた。BGMも。

 こんな画像、作ってもいない。

 音楽ももちろんだ。

 ということは―― またコビトがいたのである。

 朝、見た時にこれはなかった。