ザーッッッッ。

 ソウマは、意識のないカイトを担いでいくと、服のままバスタブの中に突っ込んだ。

 そして、シャワーのコックをひねった。

 上の方にホールドされているヘッドから、冷たい雨が降り注いだ。

 バスタブのへりに座ると、雨の余波が自分にも降りかかったが、そんなことはどうでもよかった。

 カイトの顔が二度歪んで、うなりながら目を開ける。

「何で…手放したりしたんだ」

 この頃には、彼もさっきまでの自分が大人げなかったことに気づいて、冷静に戻ろうと努力していた。

 カイトも冷水で頭が冷えてきたのか、もう飛びかかってくるような様子はない。

 うなだれて、雨を受けている。

「…つを…」

 ぼそぼそっと、カイトが言った。

「あいつを…無理矢理押さえつけて…」

 それが聞こえた時―― ソウマは、あいた、と思った。

 ついに、カイトのガマンがキレてしまったのだ。

 そして、メイにとってよくない形で爆発したにちがいない。

 書き置きに、出ていく理由が書けないワケである。

「まったく…好きだと言わなかったのか?」

 その言葉を出せば、うまくいきそうなものだ。

 見立てでは、向こうの方もカイトを憎からず思っているハズなのだから。

 たった数文字の、愛の言葉。

 カイトは、力無く首を横に振った。

「…えるワケねぇ」

 何が言えるワケないのか。

 ソウマは、頭を抱えた。

 その言葉さえ言えていれば、今ごろは大ハッピーエンドだったのかもしれないのだ。

 それを、カイトは分からないのか。

 ああ。

 きっと分からなかったのだろう。

 こんなに誰かを好きになったことは、なかっただろうから。