「そんなに好きなら…何で手放したんだ?」

 こんなになってしまうほど、メイという女性が好きなのだ。

 今までの付き合いの中で、ソウマの見たことのないカイトになってしまうほど。

 ボロボロの極みまで突っ込んでいる。

 ソウマの問いかけに、カイトのグレイの目に光がよぎる。

 しかし、その表情は直後に苦悶に変わった。

「何が…分かる」

 うなるような声。

「おめーに何が分かる!」

 思いがけない強い力で手が払われる。

 ソウマが一歩下がると、ゆらりとカイトは立ち上がった。

 いまにも掴みかかってきそうなオーラを感じた。

「人に分かってもらわなくて結構と思っているなら、自分できっちりカタをつけてみろ。いまのお前は、断崖絶壁に向かって歩き続けている顔をしているぞ」

 鏡でも見るんだな。

 カイトがカッとなったのが分かった。

「馬鹿野郎め…」

 ためいき一つついて、ソウマは向かってくるカイトのどてっ腹に拳をたたき込んだ。


 足元フラフラだったカイトをのしても、イヤな気になるだけだった。