ドアの外にいるのが誰か分からないと、余計に出ていけなくなる。

 もしかしたら、あの二人以外にも、ここに住んでいる人がいるかもしれないのだ。

 立ちつくしたままのメイは、その時間がついに終わることを知った。

 ガチャリ。

 脱衣所のドアが開けられたのである。

 ドキン!

 喉から心臓が飛び出しそうになった。

 硬直したまま、誰が出てくるのかを見ていた。

「あら?」

 目が合った。

 相手は、驚いた目でメイを見ていた。

 女性だった。

 薄茶の長い髪がすごく綺麗だった。

 整って落ちついた大人の女性の顔。

 白いシャツにロングタイト姿で、仕事の出来そうな、人にも好かれそうな、そんな匂いがする。

 メイは、更に硬直した。

 この家に、女性がいたのだ。

 頭の中が、スロットマシーンのように一気に回り出す。自動で止まるタイプだ。

 けれども、目はそんなにたくさんはない。

 カイトと、もう一人の男と、メイと――目の前の女性。

「あの……あなた?」

 誰?

 そういう目だった。

 とがめているというよりも、驚いているだけだ。

 のっぽの男の、いきなり警察沙汰とは違う。

 その女性は、腕にカイトが脱ぎ散らかしたままだったシャツを持っていた。
 床から拾ってきたのだ。

 タオルをぎゅっと握ったまま答えられないメイは、動けずにいた。

「あなた……?」

 目に不審がちらつき始めた瞬間。

 一つ目のスロットの目が止まった。一番左だ。

 目の前の女性の絵柄で、ぴたっと止まる。

 それと同時に、ピルルルル――と、鳥のさえずりのような音が聞こえた。

 メイは、慌てて頭を巡らせる。

 何の音か分からなかったのだ。

 しかし、目の前の女性は慌てなかった。

 腰からケイタイを取り上げたのだ。