□135
「…長…社長!」
呼ばれたのにも気づかなかった。
はっとカイトが顔を上げると、いま自分がパソコンの前に座っていたのに気づく。
要するに、愛しい開発室にいるのだ。
声をかけてきたのは、他のスタッフで。
いま、自分の意識があらぬ方にいっていたのを隠すために、カイトはジロリとそっちを睨んだ。
八つ当たり以外の何者でもない。
「社長…タバコ、危ないですよ」
しかし、相手はそんな睨みよりも、そっちの方が心配だと言わんばかりだった。
何を言ってるのかと、指に挟んだままのタバコを見ると、かなりの灰の塔状態になっていて、フィルター部分すれすれまで来ていた。
あと1ミリ下までくれば、彼の人差し指と中指にヤキを入れられるほどだ。
ムッッ。
そのタバコを、乱暴に灰皿に押しつける。
乱暴過ぎて、バベルの塔は崩れた。
辺りにぱっと白い灰が散る。
どんなに隠そうとしても、今日のカイトが上の空なのがバレてしまいそうなのが腹立たしかった。
鍋が。
そう、鍋がいけないのだ。
新しいタバコに火をつけながら、カイトは親切なスタッフを追いやった。
オレは何でもない、という態度を崩さずに。
メイが、夜に2人でナベをしようなどと誘ったのだ。
考えると、今度は落ち着かなくなって、スッパスッパとタバコをふかしてしまう。
「…長…社長!」
呼ばれたのにも気づかなかった。
はっとカイトが顔を上げると、いま自分がパソコンの前に座っていたのに気づく。
要するに、愛しい開発室にいるのだ。
声をかけてきたのは、他のスタッフで。
いま、自分の意識があらぬ方にいっていたのを隠すために、カイトはジロリとそっちを睨んだ。
八つ当たり以外の何者でもない。
「社長…タバコ、危ないですよ」
しかし、相手はそんな睨みよりも、そっちの方が心配だと言わんばかりだった。
何を言ってるのかと、指に挟んだままのタバコを見ると、かなりの灰の塔状態になっていて、フィルター部分すれすれまで来ていた。
あと1ミリ下までくれば、彼の人差し指と中指にヤキを入れられるほどだ。
ムッッ。
そのタバコを、乱暴に灰皿に押しつける。
乱暴過ぎて、バベルの塔は崩れた。
辺りにぱっと白い灰が散る。
どんなに隠そうとしても、今日のカイトが上の空なのがバレてしまいそうなのが腹立たしかった。
鍋が。
そう、鍋がいけないのだ。
新しいタバコに火をつけながら、カイトは親切なスタッフを追いやった。
オレは何でもない、という態度を崩さずに。
メイが、夜に2人でナベをしようなどと誘ったのだ。
考えると、今度は落ち着かなくなって、スッパスッパとタバコをふかしてしまう。