八万円のワンピース。

 そんな服、買ったことがなかった。

 本当にいいのだろうかと、また考え込んでしまう。

 ビルの角を曲がり、見覚えのある看板の方に歩きながら、メイはまたため息をついた。

 でも、あの服はとても可愛いかったのだ。

 とりあえず、服のことは帰ってハルコに相談してみようと思った。
 きっと彼女の方が詳しいだろう。

 何しろ、この服を見立ててくれた人だったのだから。

 コムサが、どうとか。

 8万円はしないだろうけど、きっとこの服も高いんだろうなぁ。

 いいのかな。

 そんなことを思いながら、彼女はどんどん歩いて行った。

 が。

 しかし。

 メイはピタリと足を止めた。

 あれ?

 気になることがあったのだ。

 そうして、よく思い出してみる。

 見慣れない町並みだった。

 ちょうど彼女は、交差点の赤信号で止まっていたけれども、向かう方向に知っている建物はない。

 あれれ?

 キョロキョロとする。

 すると、見覚えのある銀行の看板が遠くに見えた。

 ああ、あっちね。

 ほっとして、彼女はその看板の方向に歩き出す。何しろ、入ったことのないビルにいたのだ。

 だから、きっと出口の方角を間違ったのだろう。

 それに考え事をして歩いていたので、勘違いしていたのだ。

 メイは、白菜のビニールをガシャガシャ言わせて歩く。

 足が痛くなってきたのは、よく歩いたせいだろう。