きゃぁー!!!!

 メイは心臓が飛び出しそうだった。

 その悲鳴を、心臓と一緒に必死で飲み込む。

 カイトだったのである。

 片手で彼女を支えて、もう片手はダイニングの入り口に引っかけて、彼女の転倒を止めてくれたのだ。

 一気に、全身が熱くなる。

 夢が勝手に彼女の中をプレイバックしたのだ。

「あっ…あのっ…ごめんなさ…!」

 焦りまくったメイは、もがくようにして彼の腕から逃れて、自分の足で立った。

 馬鹿みたいにドキドキしている。

 それを、気づかれたくなかった。

 そんな彼女に、カイトは眉を寄せた。
 怒ったような顔になる。

「ご飯…そう、ご飯食べません? おなかすきましたよね?」

 わたわたとその場を取り繕いながら、メイは逃げるようにダイニングに入った。

「いらねー」

 しかし。

 まだダイニングの外にいるカイトの声が聞こえた。

 足音がする。遠ざかる音だ。

 えっ、とメイは廊下を覗くと、彼の背中は階段の方へと消えた。

 何で?

 わざわざダイニングまで来たのに。

 何故、あんなに慌てて飛び出してきたかは分からないが、おなかがすいていたのではないのだろうか。

 それとも、彼女の態度が気に入らなかったのだろうか。

 もしかして―― 何か、イヤなものでもあったのかな。

 そう思って、メイはダイニングや調理場の方を見たけれども、彼の食欲を失わせるような、めぼしいものは見つからなかった。

 何だか。

 気になって、散歩どころではなくなってしまった。