非常に分かりにくい態度に思えるが、ハルコにはバレバレだった。

 大学時代、社長時代と一緒にいたのである。

 まさしく、『使用前・使用後』、もとい、『恋前・恋後』といったところだった。

 分かっていないのは、たった一人だ。

 メイ。

 彼女は、恋前を知らないのである。

 だから、あんなに態度が激変したことに気づかないのだ。

 ああ、早く。

 一人焦れる。

 早く、気づいて。

 無粋な口は挟みたくない。

 カイトの気持ちは、彼自身が伝えて初めて相手に通じるものだとハルコは思っている。

 だから、それを自分がメイに伝えることは、はばかられているのだ。

 いまのカイトは、かつてない態度や行動をするので、確かに見ていると楽しい。

 けれども、早く幸せになって欲しいと願う心も、しっかりと彼女の中には根付いている。

 後は、花を咲かせるだけ。

 ああ、うまくいったら、どうなるのかしら。

 また違う楽しみが、ハルコの胸によぎる。

 カイトの態度が、また激変するのだろうか。

 それとも、やはり今のままを続いていくのだろうか。

 様々なシミュレーションを走らせるが、彼が本当に恋をしたのは初めて見たので、なかなかうまく結論を出すことが出来なかった。

 ただ分かるのが、メイをうまく使えば、カイトはいろんなことに対して、決して『NO!!』と言わなくなるだろうと言うことだ。

 あのカイトが、クリスマスパーティに。
 想像するだけで、ハルコは肩を震わせた。

「今日は、お迎えはナシか?」

 考えに夢中になっていたハルコは、声にはっと顔を上げた。

 亭主が、仕事から帰ってきたのである。

 居間の入り口のところで、ちょっと笑ったソウマが見えた